今回の新型コロナについては、分かってきたこともありますが、まだまだ分からないことも多くあります。私が前から、ちょっと気になっているのは致死率です。致死率とは、「死亡者数÷感染者数」です。現状ではまだ治療中の者が多いので、最終的な致死率は推計するしかないのですが、ネット上では、「意外と高い」とか「スペイン・インフルエンザに匹敵する」等の表現が目立ちます。
と、色々考えながらネット上をつらつらと見ていたのだけど、そもそもスペイン・インフルエンザの致死率ってどれくらいだったんだろう? と思って調べてみたら、2.5%と書いてるサイトが多いようです。つまり、100人感染して2.5人が死亡する、と。
しかし、結論から言うと、この2.5%というのはあまり信頼に足る数字ではないと思います。以下解説。
例えば、こちらの国立感染症研究所感染症情報センターのサイト(←クリックで飛びます)によると、1918~1919年にかけて世界中で流行したスペイン・インフルエンザの感染者数、致死率、死亡者数は以下の通りです。
<感染者数>
・世界人口の25~30%(WHO)
・世界人口の3分の1(Frost WH,1920)
・約5億人(Clark E.1942.)
<致死率>
・2.5%以上(Marks G, Beatty WK, 1976; Rosenau MJ, Last JM, 1980.)
<死亡者数>
・4,000万人(WHO)
・5,000万人(Crosby A, 1989; Patterson KD, Pyle GF, 1991; Johnson NPAS, Mueller J, 2002.)
・1億人(Johnson NPAS, Mueller J, 2002.)
当時の世界人口は約18億人ですから、世界人口の25~30%というのは4.5~5.4億人、3分の1というのは約6億人です。というわけで、スペイン・インフルエンザは、
・感染者数 4.5億~6億人
・致死率 2.5%以上
・死亡者数 4,000万人~1億人
という事だと思います。
しかし、これらの数字、ちょっと見ただけでおかしいと思いません? 致死率だけは2.5%で1つなので、致死率を中心に考えると、
・感染者数が4.5億人で、致死率2.5%だとすると、死亡者数は1,125万人
・感染者数が6億人で、致死率2.5%だとすると、死亡者数は1,500万人
死亡者数 4,000万人~1億人の間に入らないほど少なくなってしまいます。
逆に、
・死亡者数が4,000万人なら、致死率2.5%だとすると、感染者数は16億人
・死亡者数が1億人なら、致死率2.5%だとすると、感染者数は40億人
当時の世界人口が18億人という事を考えると、明らかにおかしな数字です。
なぜ、国立研究所のサイトにこんな数字が出ているか? というと、それは、上記数字がいろんな論文や報告書の寄せ集めだからです。だから、これは仕方ない。
致死率というのは、単純に「死亡者数÷感染者数」ですから、こうなると2.5%と推計している1976年と1980年の2本の論文の著者達が、どういう前提で計算したのか? つまりこれらの著者達は感染者数と死亡者数をどう捉えていたのか? を知らなければ、2.5%の確からしさを評価できません。しかも、上記引用では、「2.5%以上」という書き方をしており、この「以上」というのはどういう意味なのか? も原著を当たらないと分かりません。ちなみに感染者数と死亡者数の両方を出しているWHOの数字(感染者数4.5~5.4億人、死亡者数4,000万人)を使うと、致死率は8.9%~7.4%です。なぜ今現在、WHOの数字が使われずに、2本の学術論文の2.5%という数字が使われているのか? 少々違和感を覚えます。
いずれにしても、「スペイン・インフルエンザの致死率は約2.5%」という数字を使うのであれば、その数字の意味を知っておく必要があります。それには、最低限、2本の原著論文を良く読んで、著者らの考え方と計算方法を理解しておく必要があります(オレは読んでない)。
もしかすると、WHOの数字よりも、2本の学術論文の数字である2.5%方が、確からしいという研究者間のコンセンサスがあるのかもしれません。その場合は、死亡者数の4,000万人とか、ましてや1億人という数字は、当時の地球の全人口数から考えてあり得ない、ということは知っておく必要があります。また、これらの数字を切り貼りして、「死亡率2.5%で、死亡者数は約5,000万人」なんて書いてるサイトがあったら、そのサイトはアテにならないと判断すべきでしょう。
ちなみにウィキペディアでは、感染者数5億人、死亡者数1,700~5,000万人という推計値を採用しています。この場合致死率は、3.4%~10.0%となります。ちょっと幅があり過ぎですが、要するに正確な死亡者数が良く分からんので、致死率も良く分からんということでしょう。感覚的にはこれが実態なのではないか? という気もします。100年前の国家の国内統計体制は今よりはるかに弱かったでしょうし、何よりスペイン・インフルエンザが発生したのは、第一次世界大戦中です。
今回のコロナに関しては、大きな特徴として、感染しても症状が出ない人がいるのは確かなようです。こういう人は統計に捉えられる事が無いので、今回のコロナの本当の意味での致死率は出せないかもしれませんね。また、ちゃんと治療すれば助かったのに、適切な医療が提供できないがために死亡させてしまったというケースも多そうなので、純粋にウィルスの毒性だけではなく、社会の医療体制にも影響されそうです。ただ、各国の状況を見ていると、今回のコロナの致死率が2.5%に収まることはあり得ない気がしますね。
と、色々考えながらネット上をつらつらと見ていたのだけど、そもそもスペイン・インフルエンザの致死率ってどれくらいだったんだろう? と思って調べてみたら、2.5%と書いてるサイトが多いようです。つまり、100人感染して2.5人が死亡する、と。
しかし、結論から言うと、この2.5%というのはあまり信頼に足る数字ではないと思います。以下解説。
例えば、こちらの国立感染症研究所感染症情報センターのサイト(←クリックで飛びます)によると、1918~1919年にかけて世界中で流行したスペイン・インフルエンザの感染者数、致死率、死亡者数は以下の通りです。
<感染者数>
・世界人口の25~30%(WHO)
・世界人口の3分の1(Frost WH,1920)
・約5億人(Clark E.1942.)
<致死率>
・2.5%以上(Marks G, Beatty WK, 1976; Rosenau MJ, Last JM, 1980.)
<死亡者数>
・4,000万人(WHO)
・5,000万人(Crosby A, 1989; Patterson KD, Pyle GF, 1991; Johnson NPAS, Mueller J, 2002.)
・1億人(Johnson NPAS, Mueller J, 2002.)
当時の世界人口は約18億人ですから、世界人口の25~30%というのは4.5~5.4億人、3分の1というのは約6億人です。というわけで、スペイン・インフルエンザは、
・感染者数 4.5億~6億人
・致死率 2.5%以上
・死亡者数 4,000万人~1億人
という事だと思います。
しかし、これらの数字、ちょっと見ただけでおかしいと思いません? 致死率だけは2.5%で1つなので、致死率を中心に考えると、
・感染者数が4.5億人で、致死率2.5%だとすると、死亡者数は1,125万人
・感染者数が6億人で、致死率2.5%だとすると、死亡者数は1,500万人
死亡者数 4,000万人~1億人の間に入らないほど少なくなってしまいます。
逆に、
・死亡者数が4,000万人なら、致死率2.5%だとすると、感染者数は16億人
・死亡者数が1億人なら、致死率2.5%だとすると、感染者数は40億人
当時の世界人口が18億人という事を考えると、明らかにおかしな数字です。
なぜ、国立研究所のサイトにこんな数字が出ているか? というと、それは、上記数字がいろんな論文や報告書の寄せ集めだからです。だから、これは仕方ない。
致死率というのは、単純に「死亡者数÷感染者数」ですから、こうなると2.5%と推計している1976年と1980年の2本の論文の著者達が、どういう前提で計算したのか? つまりこれらの著者達は感染者数と死亡者数をどう捉えていたのか? を知らなければ、2.5%の確からしさを評価できません。しかも、上記引用では、「2.5%以上」という書き方をしており、この「以上」というのはどういう意味なのか? も原著を当たらないと分かりません。ちなみに感染者数と死亡者数の両方を出しているWHOの数字(感染者数4.5~5.4億人、死亡者数4,000万人)を使うと、致死率は8.9%~7.4%です。なぜ今現在、WHOの数字が使われずに、2本の学術論文の2.5%という数字が使われているのか? 少々違和感を覚えます。
いずれにしても、「スペイン・インフルエンザの致死率は約2.5%」という数字を使うのであれば、その数字の意味を知っておく必要があります。それには、最低限、2本の原著論文を良く読んで、著者らの考え方と計算方法を理解しておく必要があります(オレは読んでない)。
もしかすると、WHOの数字よりも、2本の学術論文の数字である2.5%方が、確からしいという研究者間のコンセンサスがあるのかもしれません。その場合は、死亡者数の4,000万人とか、ましてや1億人という数字は、当時の地球の全人口数から考えてあり得ない、ということは知っておく必要があります。また、これらの数字を切り貼りして、「死亡率2.5%で、死亡者数は約5,000万人」なんて書いてるサイトがあったら、そのサイトはアテにならないと判断すべきでしょう。
ちなみにウィキペディアでは、感染者数5億人、死亡者数1,700~5,000万人という推計値を採用しています。この場合致死率は、3.4%~10.0%となります。ちょっと幅があり過ぎですが、要するに正確な死亡者数が良く分からんので、致死率も良く分からんということでしょう。感覚的にはこれが実態なのではないか? という気もします。100年前の国家の国内統計体制は今よりはるかに弱かったでしょうし、何よりスペイン・インフルエンザが発生したのは、第一次世界大戦中です。
今回のコロナに関しては、大きな特徴として、感染しても症状が出ない人がいるのは確かなようです。こういう人は統計に捉えられる事が無いので、今回のコロナの本当の意味での致死率は出せないかもしれませんね。また、ちゃんと治療すれば助かったのに、適切な医療が提供できないがために死亡させてしまったというケースも多そうなので、純粋にウィルスの毒性だけではなく、社会の医療体制にも影響されそうです。ただ、各国の状況を見ていると、今回のコロナの致死率が2.5%に収まることはあり得ない気がしますね。
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