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2009年11月5日、バンコクに赴任しました。2011年9月1日、東京に戻りました。2013年10月1日、福岡に移住しました。
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8月になると報道が増える話題のもう1つが原爆です。私はわずか2年間ですが、長崎に住んでましたから、やっぱり気にします。

ここで紹介したいのは、白井久夫著(1992)「幻の声」岩波新書。著者は元NHKの社員。この本は、原爆の悲惨さや反戦を直接訴える物ではありません。原爆が落ちた瞬間のNHK広島放送局で何が起こったのか?を追った優れたドキュメンタリーです。

きっかけは、番組作成の過程で視聴者から送られてきた手紙。その手紙は、「原爆の落ちたすぐあとで、広島のラジオから美しい悲しい女の声が呼びかけ、やがてと切れた。その人はどうしたのか、と問うているのだ」。著者は、被爆直後の広島放送局でそんなことが可能だったのだろうか?と思いつつも、放送に携わる人間としてこの声を追っていきます。

著者の調査からは、被爆直後にマイクに向かってしゃべることができた女性職員はいなかった。また、放送機材も電波が出せる状態でなかった可能性が非常に高い。何より“人”がいなければ声は電波に乗ることは無い。しかし、調査の過程で、被爆直後にラジオから声を聞いたのは、送られてきた一通の手紙だけでなく、実は複数の人が同じような証言をしていたことが分かる。いずれも「大阪さん、大阪さん・・・・」とNHK大阪放送局に呼びかける声。

被爆直後に、本当に女性の声がラジオから流れたのか?流れたとしたら誰の声だったのか?著者の綿密な資料収集と聞き取りによって、8月6日午前8時15分前後にNHK広島放送局で何が起こったのか?が描き出されます。全く消息の分からない者、気を失い気が付いたら知らない人に手を取られて歩いていた者、そして何とか放送を復旧させようと努力した者。これらの人間ドラマと“幻の声”を通じて放送の重要性浮き彫りにしつつ、「八月六日ヒロシマに立つのはなんとむずかしいことだろうか」と結びます。

結論としては、分からないままなのです。少なくない人が同じような証言をしていると言うことは、“幻の声”は放送電波に乗ったのではないか?と強く思います。しかし著者の調査はそれを否定します。美しく、悲しく、そしてミステリアスな1945年8月6日の“幻の声”です。

改めて、ヒロシマ、ナガサキの原爆で亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。
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